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「身体柱立」 (shindai-hashiradate)

今から260余年前の京都で書かれた、この「しんだいはしらだて」という本は、商人が生きて行く上での哲学を講義した際のテキストで、20歳から60歳までの人が、嗜好品(shikouhin)を全てやめた時の所得効果を計算していて、まことに興味深いものがあります。

 この記事は、読売新聞のファイルから発掘してお届けしていますが、このコラムニストの磯田 道史(Isoda Michifumi)氏は岡山出身の慶応義塾&同大学院卒業の、現在、静岡文化芸術大学教授の歴史学者で、どうも古本屋で古文書をあさるのが趣味とのことから、この本を京都寺町の古本屋で見つけたとのことながら、その京都へは、これも以前に古本屋で見つけたという加賀藩の会計担当の武士が書いた超精密な家計簿で、以前、映画にもなった「武士の家計簿」という本を執筆したのが縁で、その撮影中の京都太秦(uzumasa)へ行った際に、再び立ち寄った古本屋で見つけた古文書とのことでした。

 で、倹約の対象は「子育て」、「酒」、「たばこ」、「油元結(理髪代)」の4部門からなり、相場は「15匁(monme)替」、つまり、銭1000文=銀15匁が基準になっています。 例えば、現在、800円の蕎麦(soba)が当時16文なので、1文=50円、1匁=3300円で換算すると、、、江戸の人々の1日の生活習慣では、酒が10文(500円)、たばこ代が3文(150円)。床屋代として年間に20匁(6万6千円)使っていたことになります。月に5500円の出費ですから現在なみにおしゃれだったことが判ります。

 この頃の江戸中期の金利は「10%」でしたから、「金利の高い社会では倹約の効果は絶大」と説き、酒、たばこ、床屋を40年ガマンして貯蓄運用すれば、利子が利子を呼んで大倹約になる旨を説いているわけですネ。現在のお金に換算すると「40年間」で倹約できる金額は酒で「9千万円」、たばこと理髪代で「3千万円」の合計1億5千万円の所得効果を得られると述べています。

 また江戸時代の子育て費用も記載してあり、「上品(jyoubon)の子ども」で年600匁(198万円)、「中品の子ども」で年300匁(99万円)、「下品(ごく一般の庶民)の子ども」で年150匁(49万5千円)をかけていたとのことで、いつの時代も似たり寄ったりの生活場面が浮き彫りになって来ます。

 で、コラムの「オチ」は、日本のある政権が打ち出していた現代の「子育て給付金」は、フルに支給されても年30万円ほどでしたから、江戸時代の最も粗末な子育て「下品」の費用にも及ばないと締めくくっていました。

 巻頭にもどって、「武士の家計簿」は映画配給後、そこそこのヒットを記録し、制作費4億円をかけた、このチャンバラのない時代劇を観たおかげで、幕末~明治維新の動乱を乗り切った超精密な家計簿を記した加賀藩の役人、「猪山直之(inoyama-naoyuki)」の生き様から多くを考えさせられ、勉強にもなったものです。見損なった皆様は、いかがでしょうか、「レンタルショップ」で借りて、ご家族で一緒に観るのも、今を生きる者としては非常に有効なインパクトがあると、最近、再認識している次第です。

 

Tommy T. Ishiyama