オーデマピゲ
腕時計投資家の斉藤由貴生です。
連載第11回目の今回は、オーデマピゲについてお話させていただきたいと思います。
オーデマピゲといえば、パテックフィリップ、ヴァシュロンコンスタンタンとともに「雲上」や「三大腕時計」と呼ばれるブランドですが、それら3つの中でもっとも攻める傾向があると感じます。
最近では、「雲上ブランド」といえども、その中心的なラインナップは、『ステンレス+ブレスレット』という内容のスポーツウォッチが多く、ロレックスオイスター系の延長線上にあるような感覚であるため、腕時計ファンにとって親しみやすいといえます。
けれども、以前の「雲上ブランド」のイメージは、そういったものではありませんでした。K18ケースに革ベルトというオーソドックスなラインナップが、"まさに雲上"という印象だったわけですが、十数年ほど前までそういったイメージがあったといえます。
もちろん、その時代においても、雲上ブランドに、SSブレスレットのスポーツウォッチがラインナップされていたわけではありません。
しかし、そういったラインナップは、少数派なイメージで、注目度も今とは比べ物にならないぐらい低かったといえます。
十数年前、私はノーチラスやアクアノートを所有していましたが、「パテックを数本持っている人が、遊び用に買うのがノーチラスだ」などと批判された記憶があります。
ヴァシュロンコンスタンタンは1996年にオーバーシーズ、パテックフィリップは1997年にアクアノートを登場させているものの、それらのバリエーションは、他のシリーズと比較して少なく、ブランドとしても今ほど力を入れていない印象。
時期のラインナップとしても、スポーツ系は主流派ではありませんでした。
しかし、オーデマピゲは違ったのです。
そういった時代において、ロイヤルオークはラインナップの中心的存在。
また、1980年代の時代から、永久カレンダーなど様々なバリエーションをラインナップしていました。
まだ、雲上スポーツがまだ『邪道』と言われた2000年前後といった時代でも、「ラバーのベゼル&ベルト」が印象的な「オフショア」を登場させ、"雲上らしくない"モデルをそれまで以上に拡大させていました。
そもそも、雲上スポーツの元祖こそ、1972年に登場したロイヤルオークです。
ですから、オーデマピゲは「雲上スポーツ」という新たなカテゴリーを作ったブランドであるわけで、そういった先駆者だからこそ、「雲上ブランドとはこうあるべきだ」という枠にとらわれず、先進的なモデルを他のブランドに先駆けて登場させたのでしょう。
数十年前まで「邪道」と言われた雲上スポーツですが、2019年の今では、ロイヤルオーク、ノーチラス、オーバーシーズがそうであるように、各モデルとも、そのブランドを代表する存在感となっています。
そういった意味では、オーデマピゲの功績はとても大きいと感じるわけで、オーデマピゲの現在の姿を見れば、腕時計市場の将来が見えるともいえるかもしれません。
さて、このようにオーデマピゲは偉大な功績を残したわけですが、そういった先駆者であるにも関わらず、その恩恵はそこまで受けていないと感じます。
多くの場合、「そのカテゴリーにおける一番人気は先駆者」となる場合が多いですが、ロイヤルオークよりも、ノーチラスのほうが人気が高いといえる状況。
もちろん、尺度によって「人気」という概念は変わりますが、中古相場を見る限り、ノーチラスの評価のほうが圧倒的だと言えるわけです。
ではなぜ、そのような状況となっているのかというと、考えられる理由の一つとしてロイヤルオークのラインナップの多さがあると感じます。
ロイヤルオークは、コンプリケーションやオフショアなどをいち早く展開した反面、そのラインナップ数はノーチラスと比べて遥かに多く、腕時計ファンといえども、その全体像を把握する難易度は高いといえるでしょう。
それに対してノーチラスは、腕時計ファンならば1976年のデビューから現在までに発表された男性用モデルの全てを認識している方が珍しくなく、そのモデル数は記憶可能なレベルだといえます。
ですから、ロイヤルオークのラインナップを分かりやすく説明し、さらにその面白さを整理するコンテンツができれば、その評価はまた変わってくるのではないかと思うのです。
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