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アイクポッド

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 腕時計投資家の斉藤由貴生です。

 連載第9回目の今回は、アイクポッドについてお話させていただきたいと思います。

 

 アイクポッドは、投資家のオリバー・アイクと、デザイナーのマーク・ニューソンがタッグを組んだブランドで、1994年に誕生しました。

 日本においてアイクポッドが最も注目されたといえるのは、2000年代前半のことだといえますが、その時代はパネライやフランク ミュラーなど、"ロレックスの次に買う腕時計"という存在が注目されていたため、少々風変わりな高級腕時計が積極的に受け入れられていたように感じます。

 その頃、アイクポッドは雑誌でもそれなりに大きく取り上げられ、オリバー・アイクとマーク・ニューソンの2ショット写真は、よく見た掲載されていた記憶があります。

 当時、ラインナップの中心的存在だったのは、ヘミポッドクロノグラフですが、その定価は58万8000円(当時の税込換算)、新品実勢価格は30万円台前半といったところでした。

 同じ実勢価格に位置したロレックスは、GMTマスター2のRef.16710(青赤ベゼル)が該当しますが、当時、GMTマスター2の人気は低く、スポーツロレックスでは最安値に近い序列。

 ちなみに、オメガのムーンウォッチ(Ref.3570.50)は約18万円という新品実勢価格でした。

 ヘミポッドクロノグラフを、いまの新品実勢価格に例えるならば、70万円台程度という感覚になるわけですが、遊び心のある腕時計としては、少々高いとも感じました。

 腕時計ファンとしては、このような時計をコレクションの1本に加えたいという欲求はあったものの、その実勢価格が当時のオメガ並の価格帯だったならば、積極的に検討していたかもしれません。

 

 そんなアイクポッドですが、2000年代半ばに経営資本が変わり、2010年代には結局ブランドが廃止となってしまった模様。

 "高級+機械式腕時計+超モダンデザイン"という組み合わせは、フュージョン料理のような面白さがあったものの、結局受け入れられることはなかったといえます。

 しかし、そんなアイクポッドのコンセプトに目をつけた巨大企業が存在。

 その目利きこそ、アップル社であるのですが、2015年に登場したApple Watchはまさにアイクポッドをスマートウォッチ化させたものだといえます。

 実際、Apple Watchをデザインしたのはマーク・ニューソンで、その見た目はアイクポッドに共通する点が多いといえます。

 2017年に発表された情報(http://news.livedoor.com/article/detail/13617238/)によると、Apple Watchの売上はロレックスを抜いて、腕時計業界の第一位になったとのこと。

 つまり、アイクポッドとは逆にApple Watchは大成功を収めたわけです。

 アイクポットがロレックス並の価格帯だったのに対し、Apple Watchの主な価格は5万円前後。

 高級腕時計からすると安い価格帯だといえますが、デジタルガジェットとしては、少々高め。

 これは絶妙な価格設定だといえます。

 これなら、高級腕時計を持つユーザーでもコレクションの1本に加えたいと思うことでしょう。

 Apple Watchが発表された2015年において、アイクポッドの注目度はかなり低かったと感じますが、私としては、Apple Watchが登場したことにより、アイクポッドへの注目度にも影響を及ぼすのではないかと思っていました。

 しかし、アイクポッドはApple Watch登場後も大注目されることはなく、売値も派手に値動きしているとはいえない状況です。

 ただ、何も起きていないかというとそんなことはなく、2018年にクラウドファンディングサイトから、アイクポッドを復活させるというプロジェクトが立ち上がっています。

 そのプロジェクトは成功を収め、アイクポッドは復活を遂げたのですが、復活後の実勢価格はなんと10万円以下という水準。

 私の個人的な感想ですが、10万円以下は安すぎる設定だと思います。

 かつては、高すぎたアイクポッドですが、価格設定の振り幅が極端だといえます。

 安価な新生アイクポッドが多くの人に受け入れられたのならば、旧アイクポッドが"本物のアイクポッド"として、評価されるという文脈になることは期待できますが、今のところそういった現象は起こっていないようです。

 なにかと面白い要素のあるアイクポッドという存在ですが、高く評価されるのはいつになるのか、見守っていたいと思います。

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