シャネル
腕時計投資家の斉藤由貴生です。
連載第15回目の今回は、シャネルについてお話させていただきたいと思います。
シャネルは婦人服をメインとする高級ブランドですが、高級腕時計というジャンルで成功しているブランドのほとんどは、腕時計専業ブランドだといえます。
実際、ロレックス、パテックフィリップ、オメガなどはすべて腕時計がメインです。
また、腕時計以外のアイテムを多く扱うブランドで、高級腕時計ジャンルにおける成功を収めているのは、カルティエなど、宝飾品をメインとするブランドだといえます。
カルティエは、世界初の腕時計を造ったされるブランドであるため高級腕時計における成功は当たり前といえるかもしれません。
ただ、それ以外でも、宝飾系で高級腕時計を成功させたブランドは多々あります。
例えばブルガリは、腕時計への本格参入が1980年頃と後発ながら、2000年前後という時代には、ロレックスやオメガ、カルティエと比較対象になるポジションとなるなど大成功を収めたといえます。
しかし、同じ高級品でも、ファッションが主軸なブランドとなると、話はずいぶん変わってくるのです。
一般的な目線では、腕時計も宝飾もファッションも、それぞれを扱うハイブランドが「高級」という印象があるでしょう。
けれども、腕時計となるとファッション系ブランドだけは、いわゆる高級品の部類ではない状況。
実際、ファッションブランドの腕時計は、今現在でも高級腕時計という目線では価格帯が安く、機械式高級腕時計とは別のジャンルとして販売されている場合があります。
そういった意味では、ファッションブランドが、高級腕時計に参入する障壁は高いといえるわけで、あるブランドが新しい腕時計を出したとしても、腕時計ファンには認知すらされていないということもあるでしょう。
それは、世の中に売り出されている中古品の数を見ても分かると思いますが、ファッション系ブランドの腕時計において、10万円以上という価格帯で、なおかつ複数個(例えば100個以上)が売り出されいるブランドはシャネルを除くとないといえるのです。
ですからシャネルは、ファッションが主なブランドとして、唯一高級腕時計市場で成功した存在だといえるのです。
なぜ、シャネルが高級腕時計市場で成功したのでしょう。
その答えは、もちろん「J12」という腕時計が凄いからだということに他ならないと思います。
J12がデビューしたのは2000年のことですが、その際登場したのは黒いほうのモデルでした。
J12発売以前のシャネルは、女性用製品のみを展開するブランドだったため、「シャネルが男性用製品を出した!」と話題になったことを覚えています。
女性用のみのブランドが、初めて男性用を出したということは、大きなインパクトを与えます。
ですから、私も一人の腕時計ファンとして、デビュー時にJ12を認知したのでしょう。
ただ、その時点では、J12はそこまで大きなヒットという印象はなく、「シャネル初の男性用商品。それも本格腕時計」という話題性は、デビューから時間が経過するごとに消えるのではないかと懸念されたといえるかもしれません。
しかし2003年、J12の地位を圧倒的なものにする出来事が起こります。
それこそが、ホワイトセラミックモデルの登場です。
白い腕時計は、安価な腕時計にはあったものの、当時の高級腕時計ではほぼ皆無。
そこにシャネルは、唯一というポジションを確立したわけです。
さらにJ12の凄さは、ホワイトセラミックといった"真新しい要素"だけではないと感じます。
それは、J12の本格的な要素なのですが、男性用モデルのメインが機械式であるのはもちろん、上級モデルにはフレデリックピゲなど高級ムーブメントが搭載。
さらに、近代的なモデルでは、オーデマピゲ製のムーブメントを搭載したモデルもあり、圧倒的な凄さを見せているといえます。
以上のように、シャネルJ12には、意外性、斬新さ、その凄さを裏付ける本格的要素がとても良いバランスで混じり合っているといえます。
これこそが、ファッション系ブランドが高級腕時計を成り立たせるということの成功のキーになったのだと思います。
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