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セイコー

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 腕時計投資家の斉藤由貴生です。

 連載第16回目の今回は、セイコーについてお話させていただきたいと思います。

 

 突然ですが、高級腕時計の生産国を考えてみた場合、そのほとんどはスイス製。

 特に高級品においては、「made in swiss」という点が重要だといえます。

 例えば、ブルガリやカルティエはスイスのブランドではありませんが、腕時計となるとスイス製。

 文字盤にも「SWISS」とはっきり書かれています。

 高級品として一定の販売数を誇る腕時計の中で、スイス製以外のモノとなると、ドイツと日本ぐらいしかないといえるでしょう。

 ただ、そんなドイツのブランドでも、ランゲ&ゾーネやグラスヒュッテオリジナルは、ドイツ国外の資本となっており、独立した大手時計メーカーではありません。

 そういった意味では、日本の時計産業は世界的にも稀だといえ、特に高級品という括りでは、唯一スイス勢に対抗できる規模といえるでしょう。

 

 さて、今回は日本製高級ブランドとしてセイコーを考えるわけですが、セイコーには良い点がある反面、かなり惜しい面が多いようにも感じます。

 先に良いところですが、大きく3つの良い要素があるといえるでしょう。

 その1つが、長い歴史があるという点。

 セイコーは創業から100年以上というブランドです。

 スイス勢と比べると短いかもしれませんが、創業100年もあれば、歴史的正当性は「ある」といえるでしょう。

 ですから、歴史というハードルにおいて、セイコーは十分合格ラインに達しているといえるのです。

 ちなみに、現在のCEOが創業家という点も、老舗という印象。

 海外目線では、長らく続く日本の伝統企業というイメージになり、かなりなプラス要素となるでしょう。

 2つ目の良いところですが、『世界を震撼させたことがある』という点です。

 これぞ、まさしく世界初のクォーツ腕時計を市販したということですが、このような特徴を持つ他ブランドはスイス勢を含めてもなかなかないでしょう。

 高い技術力を駆使した新しいメカニズムは、近年でも発表されており、スプリングドライブなどがそれに該当。

 他には無い強い個性があるといえます。

 そして3つ目の良いところとして、高級品を長きにわたって作っているという点。

 近年高級品市場に参入したのではなく、50年前からグランドセイコーを作り続けていたということは、高級モデルの正当性を高める効果をもたらすでしょう。

 ですから、セイコーには、

1. 会社自体の長い歴史
2. 世界を驚かせるほどの技術力
3. 50年以上続く高級ライン「グランドセイコー」

 という要素があるわけで、「高級ブランド」に必要な条件は十分備えているといえるわけです。

 まして、「made in japan」という珍しさから、スイス勢とは明らかに異なる特徴も持っているのです。

 そういった意味では、セイコーの高級モデルはスイス勢に真っ向から対抗できる稀有な存在だといえます。

 

 しかし、セイコーにはいくつかの課題があるといえるのです。

 ということで、ここからは、セイコーの良くない点です。

 1つは、高級品のブランディングが全くなっていないということ。

 分かりやすいのは、まさに「グランドセイコー」という名前ですが、「セイコー」というブランドは、歴史や知名度がある一方、そのイメージは世界的に大衆品だといえます。

 自動車でも大衆ブランドから出た高級品の成功事例は日本国外において無いといえます。

 フォルクスワーゲンのフェートンは高い品質ながら、アメリカでもヨーロッパ市場でも受け入れられませんでしたし、トヨタは90年から海外向けに高級ブランド「レクサス」を立ち上げています。

 また、"高級なセイコー"を示すためにつけられた「グランド」という形容詞も、グローバル視点でオシャレとは思えません。

 ただし、グランドセイコーには、50年の歴史があるため、名称変更をしないほうが良いともいえます。

 とはいえ、ブランドロゴの「GS」という頭文字をとった形状は、あまり洗練されていない高級品という印象。

 いずれにしても惜しい状況だと思います。

 さらにもう一つの良くない点として、ラインナップが多すぎるという点がありますが、その数の多さゆえ、どれがどれかがかなり分かりづらい状況です。

 このようなことは、スイス勢でも、ブライトリングやIWCなどにいえますが、それらブランドは時計ファンから評判が良いのに、有名リファレンスがないため、中古品としての評価が低い傾向があります。

 ですから、セイコーというブランドは、世界的に稀な要素を持っているにもかかわらず、高級品において、その良さを活かしきれていない惜しい状況にあると思うのです。

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