ATFコラム

ホーム > > ロジェ・デュブイ

ロジェ・デュブイ

ATF20200430-01.jpg

 腕時計投資家の斉藤由貴生です。

 連載第18回目の今回は、ロジェデュブイについてお話させていただきたいと思います。

 

 ロジェデュブイは、独立時計師ロジェデュブイ氏を中心に1995年に設立ブランド。

 設立時期の"若さ"と、"独立時計師"というキーワードといえば、フランクミュラーが思い浮かびますが、まさにロジェデュブイも同じモデルといえるかもしれません。

 

 フランクミュラーといえば、日本では2002年頃から腕時計マニアを中心に流行り、2000年代中盤頃には、腕時計に詳しくないと思われる若い女性にまでそのブランド名が知られていました。

 そして、その時期、ロジェデュブイはまさにフランクミュラーの後を追うかのような存在感となっていたと感じます。

 その頃、腕時計マニアは「フランクミュラーの次に買う時計」としてロジェデュブイに注目していたといえます。

 当時、私は腕時計ファンのオフ会に顔を出したことがあるのですが、何本ものロジェデュブイを見せ合うマニアの姿を目にしました。

 彼らの話を聞くと、持っていたフランクミュラーを処分して買ったという意見も珍しくなく、ロジェデュブイは、まさに「ポストフランクミュラー」といった存在感となっていたのです。

 

 腕時計マニア界隈において、当時ロジェデュブイがそのようなトレンドとなっていたことは、私としてもとても理解できることでした。

 なぜなら、フランクミュラーの場合、一般的に売られているモデルの多くは他社製ムーブメント。

 ETAの機械をベースとしたものが中心だったわけです。

 それに対して、ロジェデュブイは自社製ムーブメント。

 さらに、ジュネーブシール取得という超本格派でした。

 

 当時のジュネーブシールといえば、まさにパテックフィリップ御用達という印象。

 雲上用達のお墨付きが与えられているというのは、「凄い」と感じられたことでしょう。

 また、ロジェデュブイの腕時計は、1900年代初頭のデザインをオマージュしたといった雰囲気がフランクミュラーとどことなく似ています。

 ですから、「フランクミュラーよりももっと凄いモノが欲しい」といった要望にロジェデュブイはうってつけだったといえます。

 さらに、その頃フランクミュラーは多くの人に注目される知名度となりつつあったため、ロジェデュブイは「人とかぶらない」という面でも魅力的。

 まして、その生産本数は当時28本の限定だったため、腕時計マニア目線ではたまらない存在だったといえるのです。

 ですから、ロジェデュブイというブランドは、2000年代前半において「フランクミュラーの次に流行る腕時計」というポテンシャルがあったといえます。

 

 その頃までの間、日本の流行は、『ロレックス⇒パネライ&フランクミュラー』という流れがあったため、その後も数年に一度のタイミングで新たなブランドが注目されるのではないかと思われていました。

 しかしながら、結果的にロジェデュブイはそのような立ち位置になることはありませんでした。

 フランクミュラーやパネライと異なり、ロジェデュブイは腕時計マニア以外の方々にはあまり知られることがなかったといえます。

 そういったことは、現在の中古売値を見ても分かるのですが、『自社製ムーブメント、ジュネーブシール、K18ケース』という内容でありながら、100万円以下という価格が目立つわけです。

 なお、ロジェデュブイは2008年にリシュモングループ入りしていますが、それ以前のモデルに関しても特に評価されるといったこともありません。

 パネライの事例では、「プレリシュモン」ということが1つの評価となっている面がありますが、そのような現象はロジェデュブイには起こっていないわけです。

 実際、かつて腕時計マニアに注目されていたマッチモア、トゥーマッチ、ゴールデンスクエアなど往年の名作も、「機械式・メンズ」という条件で50万円台~といった売値となっています。

 

 ではなぜ、ロジェデュブイは「ポストフランクミュラー」となることがなかったのでしょう。

 私としては、2つの理由があると考えています。

 1つは、ロジェデュブイの「28本限定」が、逆効果を生み出してしまったという点。

 限定数が少ないのは、ユーザー目線で所有満足度を高める効果をもたらしそうですが、その一方で大量のモデルを生むことにもなり、「どれがどのモデルか」が分かりづらくなります。

 そうすると、ユーザーからしても「憧れのモデル」といった対象が分かりづらく、また査定面でも評価しづらいといった側面があるでしょう。

 結果的に、スター級モデルを生み出す弊害となってしまい、多くの人にとっての「憧れ」を作ることが困難となったのだと思います。

 そして、もう一つは、フランクミュラーの次に流行る存在がパテックフィリップとなってしまった点です。

 具体的には、フランクミュラーの次に「パテックフィリップ」と「独立時計師ブーム」に分かれるといえますが、結局、パテックフィリップに集約されそれ以降は「次に流行るブランド」といった存在感はウブロぐらいしかないといえるわけです。

 こういったことが重なり、ロジェデュブイは一時「ポストフランクミュラー」と言われながらも、ブームといえるほどの高い注目度とはならなかったのでしょう。

 

 ただ、今の時代、内容を考えると安価で購入可能なため、知識があるユーザーとしては、穴場のような存在だといえます。

 そういった意味では、ユーザーからすると、ある意味今が買い時なブランドともいえるのですが、そこまでの購買意欲を持ったユーザーが、どの程度存在するかかということについては全く想像ができないところでしょう。

ATF20200430-02.jpg

ATF20200430-03.jpg