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ブランパン

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 腕時計投資家の斉藤由貴生です。

 連載第21回目の今回は、ブランパンについてお話させていただきたいと思います。

 

 ブランパンは、ブレゲとともにスウォッチグループの最高峰を担うブランドで、そのポジションは「雲上」に匹敵するという印象があります。

 実際、定価や百貨店での取り扱いの様子、及び腕時計のキャラクターは、まさに「最高級」といったところ。

 パテックフィリップ、オーデマピゲ、ヴァシュロンコンスタンタンのライバルといえるかと思います。

 ただそういった立ち位置はあくまで「新品」での話。

 中古品となると、その価格帯は上の3大ブランドよりも安価という印象があるわけです。

 

 ブランパンの腕時計は、腕時計ファン目線では「作りがとても良い」と好評。

 そうであるにも関わらず中古売値が安いため、上級者からは「お得なブランド」と認知されているように感じます。

 そのため、上級消費者目線だと「内容の割に安い」という穴場のような存在感であるのですが、そのような楽しみ方をできている方はそこまで多くない印象です。

 実際、ブランパンの腕時計は、同じ時代のライバルと比べて安値だといえます。

 例えば、2002年頃に現行モデルとしてラインナップされていたエアコマンドの定価は140万円(税別)、平行品の新品実勢価格は80万円前後(税別)といった水準でした。

 エアコマンドは、フィフティファゾムス、GMTとともに1997年に登場したスポーツモデルですが、同じ時期に登場したアクアノートやオーバーシーズのライバルだったといえます。

 当時、ロイヤルオークの14790と、オーバーシーズの42052の新品実勢価格は50万円台中盤といったところでしたが、ブランパンのGMTやフィフティファゾムスも同様の新品実勢価格となっていました。

 また、クロノグラフは3針よりも高い傾向があり、おおよそ80万円以上という水準の新品実勢価格だったわけです。

 その頃、ロレックスのステンレススポーツの新品実勢価格は、30万円台が主な印象で、プレミアム価格状態の114270ですら45万円前後ぐらいでした。

 そのため、ブランパンのスポーツモデルは、私個人としても「高い」という印象の記憶があります。

 しかしながら、現在、エアコマンドの中古売値は60万円前後といった水準。

 当時のライバルよりも明らかに安価な価格帯に位置しています。

 2002年頃の新品実勢価格を基準とすると、エアコマンドのライバルは、パテックフィリップだとアクアノート5065/1A、ヴァシュロンコンスタンタンならオーバーシーズクロノグラフの49140となるのですが、前者は300万円以上、後者は100万円以上といった中古価格で需要があるわけです。

 

 ブランパンの腕時計は、先のように腕時計ファン目線では「良い」となるにも関わらず、なぜ中古市場では評価されづらいのでしょうか。

 その理由としては、大きく2つあると考えているのですが、1つは有名モデルがあまりないという点、もう一つはメンテナンスに難があるという点だと思います。

 有名モデルがあまりないという点についてですが、ブランパンには「フィフティファゾムス」という歴史あるスポーツモデルがありますが、その知名度はノーチラス、ロイヤルオーク、オーバーシーズと比べて弱いといえます。

 また、フィフティファゾムスは、97年世代では「トリロジーシリーズ」の1モデルだったのに対し、現行モデルではそれ自体がシリーズとなっており、消費者としては混乱してしまいます。

 

 次に、メンテナンスに難があるということについてですが、これはブランパンの腕時計に問題があるというよりも、イメージの問題があると感じます。

 ブランパンの立ち位置は雲上級ですから、メンテナンス費用も雲上ブランドに匹敵。

 しかしながら、搭載されているムーブメントはフレデリックピゲであるため、消費者心理としてはなんとなく割高という印象になってしまうわけです。

 もちろん、フレデリックピゲは高級ムーブメントですから、決して割高でないともいえるのですが、これはあくまで消費者心理の話。

 また、フレデリックピゲにはデリケートという側面もあるため、その割高感はより強調されてしまう場面があるでしょう。

 

 そのようなことから、ブランパンの腕時計は、「誰かが良いという⇒欲しい人が徐々に増える⇒需要が高くなっていく」という好循環になかなかならないのでしょう。

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