IWC
腕時計投資家の斉藤由貴生です。
連載第22回目の今回は、IWCについてお話させていただきたいと思います。
腕時計購入を検討するユーザー目線でIWCというブランドを見た場合、そこには異なるキャラクター像がいくつもあると感じます。
新品で購入する目線、近代的な製品を中古購入する目線、そして「オールドインター」と呼ばれる古い製品を買う目線。
このように、おおよそ3つのキャラクターがIWCにはあるわけですが、それぞれ「欲しい」思われるニーズは異なるわけです。
オールドインターは、比較的マニアックな腕時計好きから好まれ、その主な価格帯は30万円以下といった感覚があります。
それに対して、新品の場合、ポルトギーゼなど人気モデルの価格帯は70万円から100万円程度といったところ。
これは、ロレックスオイスタパーペチュアルの114300ダークロジウム文字盤などより高いわけですが、以前はスポーツモデルと比べても「ロレックスよりもIWCのほうが高い」といった印象がありました。
しかし、そのような近代的モデルが中古となった場合、その相場はロレックスよりも安い傾向があります。
2010年前後といった時代でも、そういった感覚はあり、当時「新品だとIWCのほうが高いのに、中古となるとIWCのほうが安い」と感じた記憶が私にはあります。
とはいうものの、その頃の中古相場は、「ロレックスより少し安い」といったところ。
その差は数万円で、今のように数十万円単位での開きがあるというわけではありませんでした。
そして、興味深いのは、比較的近代的なモデルの中古相場があまり変動しないという点です。
2010年頃と2017年頃とでは、ロレックスの多くはかなり異なる相場となっていますが、IWCの場合、相場差がほぼ無いというモデルが目立っていました。
ですから、近代的なIWCの中古という選択は、今の時代においてお得感を持つといえます。
これ前述べてきたように、IWCには「オールドインターに対するマニアックな目線」、「新品購入での目線」、「お得感のある中古購入」といった3つのキャラクターがあるわけですが、全く共通点が無いわけでもありません。
特に目立った共通項として感じるのが「型番で語られない」といった文脈でしょう。
ロレックスやパテックフィリップ、パネライなど人気高級腕時計の場合、腕時計ファンからそのリファレンスが認識されています。
しかし、IWCの場合、リファレンスで語られ合うことは少なく、「IWCが良い」ということは共感できても、「このモデルが良い」ということが共有できない様子があるわけです。
そのようなことは、オールドインターの文脈でも同様で、マニアック目線でも、同じモデルを「これが良い」と共有することは難しいでしょう。
腕時計に限らず、スピーカーでもクルマでも、マニアは、一般的には知られていないモデルを共有することを楽しみますが、IWCの場合はそれがしづらく、その輪郭はぼんやりとしていると感じます。
例えば、クルマの場合、「W124の93年モデルがベスト」などといった会話が成り立ちますが、IWCの場合、大げさに言うならば「古いベンツ」といった感じでしか共有することが難しいわけです。
その結果、IWCというブランドの知名度や、人気度の割には、オールドインター含め、中古があまり高くないといった現象が起こっているのだと思います。
ただし、「中古が安い」ということは、今のように多くの腕時計が値上がりしている時代において、「高いから買いたくない」という腕時計ファンにとってのオアシスのような存在感ともいえます。
そのため、私はそういった方々には、IWCの中古を推奨しているのですが、なぜか彼らは安いIWCを買いたがらず、むしろ、定価でノーチラスやデイトナを買うことを希望しているわけです。
そういった意味では、今中古におけるIWCの立ち位置は、需要<供給となっているわけで、依然として中古がお買い得といった状況が続いているのだと思います。
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