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エルメス

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 腕時計投資家の斉藤由貴生です。

 連載第23回目の今回は、エルメスについてお話させていただきたいと思います。

 

 「高級ブランド」として有名な存在といえば、ロレックス、ルイヴィトン、ジョルジオアルマーニなどがありますが、「高級腕時計」となると強いブランドは限られているといえます。

 同じ高級ブランドでも、高級腕時計として強いのは、"腕時計専門のブランド"、もしくは"宝飾ブランド"といったところ。

 カバン、靴、衣服などをメインとするブランド(以下 非・宝飾系)は、高級ブランドとして認知されていても、腕時計は強くなかったといえます。

 しかし、2000年代になるとそういった状況を打破するブランドが登場。

 シャネルやルイヴィトンがそれに該当しますが、どちらも2000年代前半という時代において革命的な新製品を登場させ、非・宝飾系の高級腕時計というポジションを確立させたように感じます。

 

 さて、今回のテーマであるエルメスですが、実はこのエルメスこそ、シャネルやルイヴィトンよりも前の時代から、高級腕時計に力を入れていたといえるでしょう。

 90年代において、非・宝飾系ブランドの腕時計は、定価ベースでも10万円以下といった印象があった一方、エルメスはもっと高い価格帯に位置していました。

 また、クリッパーなど、代表作ともいえるモデルがあり、他の非・宝飾系と比べて、高級腕時計としての存在感があったといえます。

 つまり、エルメスの腕時計は、J12やルイヴィトンのタンブールよりも先に、非・宝飾系の高級腕時計というポジションを築いていたわけですから、それなりの"存在感"があると思うのです。

 

 エルメスといえば、バーキンなど超人気商品があり、カバンにおいては、パテックフィリップのノーチラスや、ロレックスデイトナのような強力なポジション。

 そのため、腕時計のイメージもバーキン並となっても不思議でないところですが、中古市場を見る限りそのような様子とはなっていません。

 現在、クリッパーの主な中古販売価格は10万円以下といった価格帯。

 また、代表作であるはずのクリッパーは、現在廃盤となっている模様です。

 むしろ、近頃の印象だとアップルウォッチとのコラボ製品のインパクトが強く、腕時計本体よりもその革ベルトが魅力的という意見もあるかもしれません。

 

 では、なぜ、エルメスの腕時計がそれほど強くないのでしょうか。

 その理由として最も強く感じるのは、革製品のような「今買っておかないと、なくなってしまうかもしれない」という希少性がないという点です。

 革製品の場合、大人気のバーキンが入手困難なのは当たり前のことですが、バーキンやケリー以外の製品でも、色を選ぼうとすると入手するのが難しい傾向があります。

 エルメス製品の基本として、革と色のバリエーションが豊富という点がありますが、特に"色"については、ピンク色といっても様々な種類のピンクがあり、それぞれにファンが一定数いるといえます。

 私は、個人的に「バンブー」という緑色が好きなのですが、あまり売られていることがないため、見つけたときに衝動買いしてしまったことがあるのです。

 私は普段衝動買いをしませんが、「この出会いを見逃すと、中古でも手に入りづらい」という心理から、即決してしまいました。

 エルメスマニアの方々を見ても、必要ないけれど、「いま買わないとなくなってしまう」という心理から、未使用のままそれなりの数の製品を保管していることがあるようですが、私としてもその心理はすごく分かります。

 実際、コロナ禍のデパートでも、エルメスの前には行列ができていた様子がありました。

 ロレックスも同じように行列となっていましたが、入手難易度が高い製品を探す人が多いのかもしれません。

 

 その一方で、エルメスの腕時計には熱狂的なファンを持つような「要素」がなく、「ローズコンフェティ、ヴォーエプソンのバーキンが欲しい」というような指名買い需要を見出しづらいのでしょう。

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